工藝舎

読みもの

#1 奈良墨の歴史を辿る

奈良市内、三条通から一歩南に抜けた静かな路地の一角に佇む奈良墨の工房「錦光園」。日本古来の筆記具である墨と、そこに根付く手仕事の技を第7代目墨匠長野睦さんに伺いました。

墨の歴史、そして錦光園の歴史を知り、五感を研ぎ澄ませて学ぶ。

墨は、煤(すす)と膠(にかわ)に香料を混ぜたものを固めて作ります。植物性や鉱物性の煤、動物性の膠を混ぜると、粘土のような生墨ができ、攪拌するときに香料を入れて仕上げていきます。香料は、動物性の膠の匂いを抑えるために龍脳という植物を使用しますが、この香りには、心を落ち着かせる効果があるそうで、墨を擦ることで、精神が集中していくのかもしれません。写経のときなどに未だに墨を用いる寺院が多いのも頷けます。

墨の種類や模様などについて学ぶ中で印象的だったのは、墨を固める木型。とても精巧に掘り込まれていて、その型に填めて作られた墨の表情の奥ゆかしさは息を飲むほど。しかし、この型を作れる職人も減ってきており、長野さんは墨作りだけではなく、木型作りの技術も学ぶべく取り組んでおられます。握り墨は、ひんやりとした墨の質感、柔らかさに、手指の感覚が研ぎ澄まされるような、なんだか不思議な感覚を覚えます。

正倉院宝物も納められているほど歴史も深い奈良墨。墨汁の需要に押され、固形墨の需要が更に減っていると言われていましたが、過去の貴重な記録が綺麗に残っているのは墨のお陰だと知り、残していくべき技術だと痛感。墨の持つ良さに触れる事で、使う人の気持ちに寄り添ったものであったことを知る、良い機会となりました。

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